わたしの家では、子供のころから、魚がよく食卓にのぼった。
そのため、実際に、「のどに小骨が刺さることが」多くあった。
経験のある方も多いであろう。小骨が刺さると、のどの奥がちくちく、ちくちくと痛くて、2・3日は気になってし方がないものである。
お医者さんにゆくほどではない。魚の骨はやがて溶けてなくなってしまうからである。
夏のある日、テレビを見ていると桂米朝が、『骨つり』という落語を演じていた。
東京落語でいえば『野ざらし』であろう。
男が魚釣に出かけて、しゃれこうべをみつけたときに、供養のために持っていたお酒をかけて帰ってくると、夜に美女がお礼にあらわれるという落ちばなしである。
頭骨に酒をかけて魂のなぐさめをするというのである。
これを聞いたとき、「ううん・・・・こうしたお酒をかけて、霊をなぐさめるというはなし、どこかで聞いたことがあるなぁ・・・」とずっと考えることになった。
わたしにすると、これがのどに小骨が刺さったような状態である。『思い出し』というピンセットで骨をぬくことができるであろうか。
なにか、雨月物語の中に似たようなはなしがあったような、
お能の演目にそのような手向けのシーンがあったような・・・・
どうでもいいことといえば、どうでもいいことなのだが・・・
分からないままに、数十年が過ぎている。いつか、この骨は溶けてなくなってしまうのであろうか?
にぎやかに手向けて淋し草の花(子規)