昭和50年7月に英国ウインブルドン女子テニスダブルスで、沢松和子=キヨムラ組が優勝した。快挙である。
テニス世界大会は全豪オープン、全仏オープン、ウィンブルドン、全米オープンの4つである。
その一つの大会で優勝者を出したのであるから、大騒ぎであった。
わたしは、テニスについては、よくわからない。
ある日、中学時代からの友人Yのところへ遊びにゆくと、
Yが
「沢松さんがウィンブルドンダブルスで優勝したよな。あれ、すごいことなんだぜ」と言い出した。
Yは中学生のとき、軟式ではあるが、3年間テニス部にいて、府大会では中学生ダブルスの部で準優勝している。
レベルはちがうが、テニスについては一家言を持っているのである。
「なんだよ、技術がすごいのか?」
「ああ、それは当たり前のことだよ。それだけじゃなく、体調管理さ」
矢つぎばやに、言うのは
「まず、沢松さんは世界中を転戦しているから、ずっと旅行をしている。さらにヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアと飛びまわって、そのたびに時差がある。そのくにぐにで食事をとらなきゃならんが、これは洋食。さらに枕が変わる。練習しなきゃならん。テニスコートは場所によって状況がちがう。ことばが英語でなければ通じない。」
「これ全部をクリヤーして、体の大きなパワーのある外国人選手と試合をして優勝するんだ。技術、体力、精神力が最高の状態でないと勝てないぜ。言い方はわるいが、いい意味で『ばけもん』だな」
「なるほど、華麗なる『ばけもの』だよなぁ・・・・」
夏来る地を蹴り上げてテニスかな(副島いみ子)