昭和49年の梅雨は劇的であった。
台風8号の接近と梅雨前線の影響で各地に大きな被害をもたらした。
この年の7月のはじめ、われわれはサークル合宿の予定を組むために大学に集まった。
話もすんで、みんなで帰宅しようとしたとき、急に暗くなり、
遠くの空がゴロゴロ、ゴロゴロと言い出した。
と思うと数分後に光がちらばり、
ばりばり、ドオーン、ドッシャーンという音が響き
バケツをひっくりかえしたような激しい雨が降り始めた。
大学正門から傘をもって7・8人の同期たちと駅へ向かうが、1メートル先しか見えない。
駅にたどりついたときには、みんながびしょぬれであった。
A「うわぁ、ひどい目に遭った」
B「ああ、もうすぐ梅雨明けだなぁ」
A「なんで?」
B「昔から、そういうのさ。俺んちは農家で、じいさん、ばあさんがよく言ってたよ。雷はいなずまがはしるだろう。いなずまっていうのは稲の妻だから雷さまが稲をそだてるんだってよ。そのはじめごろがつゆあけなんだっていう経験則さ」
A「いねの妻かぁ、それちょっとロマンチックだよなぁ」
梅雨明けの大神鳴や山の中(日野草城)