大学に入学した年、アグネスチャンの歌う「ひなげしの花」がはやっていた。サークルに入ったとき、数人の同学年の友人が、アグネスチャンのファンで、このひなげしの花が大人気である。
♪ おかのうえ ひなげしの 花で~
占うの あのひとの ことを~・・・・・・・ ♪
かわいらしい歌である。
ひなげしの花というのは、和名で『虞美人草』という。この言い方をすれば、分かる方が多いと思うが、これは夏目漱石の小説でつかわれている題名である。
漱石は中国の美女が葬られた丘に咲く真っ赤な花伝説にヒントをえて、この小説を書いたそうだ。
虞美人草を読んだときに、漢文まじりの難解な文章に閉口したことを思い出した。「坊ちゃん」などのときのような、単純ではあるが、さわやかな結末をむかえる作品ではなかったということもあった。
あるとき、同学年の女子学生から、
「女性ってね、みかけほど、純情で単純なものでもないのよ、ノリモ君」といわれたことを思い出した。
虞美人草はそうだよなぁ、ひなげしの花ならどうなんだろう?
手弱女の顔して大根強く引く(谷口桂子)