6月1日に大学へゆく朝の電車に乗ると、高校生が男女とも白の学生服姿に代わっている。そのときに、ああ、今日から夏服かぁと気づくのである。
気候が順調で夏らしくなっている年は、さわやかでいいものである。
ほんの数年前までは、自分たちもその中にあって、夏服の解放感にひたったのを思い出す。
大学授業のあとに、サークルの仲間たちと話していると、
「そうなんだよなぁ。今日から夏服なんだ」
「あれは、まちどおしかったな、黒の学生服はえりが痛いし、重いし、暑いもの」
「この時期になると、詰襟なんてぼろぼろでさ、かなわなかったぜ」
などなど。
このはなしをしているとき、Nがはなしに加わらず、だまっている。
Hがそれに気がついて、
「おい、N、おまえはどうだったんだよ」
Nは
「うちの学校はきまった学生服がなくて、服装は自由だったから、高校時代の学生服の思い出がないんだ・・・。
それで、朝に学校へゆくときに、学生にみられないから、警察官に職務質問を受けたり、不良とまちがえられたり、ろくなことはなかったよ。かえって、制服があるのが、うらやましかったぜ」という。
いろいろな経験が、学生服にはあるようだ。
風まとひゆける身軽さ更衣(稲畑汀子)