norimoyoshiakiの日記

昭和40年の後半からの学生生活と、その後のことを日記にしています。ご意見をお待ちしています。

花ふぶき

f:id:norimoyoshiaki:20220417233016p:plain

 高校時代、三好達治の詩をおぼえた。教科書の最初のページに載っていたという記憶がある。

 「あはれ花びらながれ

  をみなごに はなびらながれ

  をみなご しめやかに語らいあゆみ

  うららかの跫音 空にながれ・・・」

 

 雑な言い方をすれば、これは絵画や詩の世界のことで、こんな風景をみることはないだろうな、と思っていた。

 わが大学はキャンパスが割と広くて、学舎にむかう道が、少し坂道になっている。その道に桜の木が植わっていて、4月になると一斉に花を咲かすが、当然、中旬から桜のはなびらが、散り始めるのである。

 ある日、大学へゆくと、文学部の学舎へ続く坂道を、おおぜいの女子学生がカバンを持って、数人連れだって、わいわい、がやがや、にぎやかにのぼってゆく。

  少し後ろの方から、法学部の同級生と歩いていると、晩春特有の、花散らしの風がふいて、

 前の方の女子学生がキャーと言って、スカートを抑えている。

 

 遠くから見ると、達治の詩になるなぁと、ぼおぉとながめていると、

 この悪友が、

「おい、あんまり、ぼおっと見てると、ちかん とまちがわれるぞ」と言ってきた。

そうか、現実は、ちかん になるのかぁ、と妙に感心した。

 その友達に、このことを言うと、

「をみなご、ちゃうやん。」と、ひとこと。

「う・・・!」と、息をつめる わたし。